2014-03-14

暴漢にバットで襲われました ー そのとき被害者は何を思っていたのか? ー




先週金曜日、3月7日午後9時45分、ランニング中に暴漢に襲われました。子供用の木製バットで殴打され、iPhoneを盗まれ頭部に6針縫う創傷、肩に打撲を受けました。

かいつまんでいうとそれだけの話なんですが、意外と冷静にその時の状況を覚えているので、記録のためというか誰かの何かの参考になるかも知れないので、その時の状況・心理状況を書いてみたいと思います。


1)Back Ground
2014年3月7日、グアム・タムニングの大通りChalan San AntonioをITCの交差点からArchibishop Felixberto Flores Memorial Circleのラウンドアバウトへ向かい、タムニング小学校側の歩道をランニングで北上していました。これまで何十回となく走ってきたコースと時間帯です。

グアムのことを少しご存知の方なら、Guam Premier Outletの前の通りといえばわかるでしょうか。通りはかなり大きな通りです。グアムは車社会なので、昼間でも歩行者はほとんどいませんが、車は夜でもそれなりに通りますし、街灯もグアムの中では明るい方です。

この通りを短パン一丁で時速11kmくらいで走っていました。襲われたのは午後9:45タムニング小学校を過ぎた辺り、昔のドッグレース場の向かいに差し掛かったときです。




2)犯人発見

小学校の前を走っている時に前方右奥に3人の男の姿が見えました。通りからちょっと入った野球場の方から出てくるような形です。

先ほども書いた通り、ほぼ人通りはないので否が応でも目に止まります。するとそのうちの一人がバットを持っていることがすでにこの時点で確認できました。距離にして30−40mくらいのところでしょうか。

「面倒くさいチンピラがいるなぁ」というような印象です。でもそうはいってもその時は本当に襲われることはないだろうというような根拠のない気持ちが心の中にあったと思います。

もう少し正確にいうと、まあ大丈夫だろうという気持ちと、走るのをやめたくないという気持ちが混ざっていたのではないかと思います。

まあ大丈夫だろうというのは、普通襲う方もしっかりした意志がないとそこそこのスピードで走っている男を仕留めることはできないからです。時速11kmでも秒速3m以上ですからヤバイと思ってスピードをあげたら秒速5m以上にはすぐになります。「おい、ちょっと顔貸せや」みたいな呑気なカツアゲだったらあっという間に振り切ることができます。そうじゃなくても向こうに少しでも逡巡する気持ちがあったら、襲撃はうまくいかないでしょう。ましてやこっちは短パン一丁で走っているオッサンなわけですから、金目のものを持っている可能性は少ないですし、襲う相手としては魅力はないはずですから。

それから、こんなことを言うとアホかと思われるかも知れませんが、タイムを計って走っていたので、コースアウトしたくないという気持ちが心の奥底であったのかも知れません。この時点ではまだバットを持っているゴロツキが歩いている程度の認識なので危機感は足りなかったのでしょう。

3)No way out

彼らを見つけた直後にその姿はある建物の奥に隠れてしまい見えなくなりました。次に彼らの姿を発見したのはほんの5−10m前です。その瞬間に「ヤバイな」と思えるやる気オーラを彼らはまとってました。

まずバットで撲られるんだろうな、とにかく頭だけは守らなきゃな、最悪これで死んじゃうこともあるかも知れないよなぁ、まいったなぁ、イヤだなぁ。

というようなことを 考えました。でも不思議なことに恐怖心はあまり芽生えませんでした。



4)3 on 1

彼らは歩道を塞ぐような形で 立ちはだかってきました。Tamuning Martという野菜スタンドのほぼ目の前です。バットを持った男が真ん中に立ちます。彼だけ少しガタイがよく(といってもこちら基準ではマッチョではない)、横の二人は若干下がっており、体つきも若干細めです。

さすがにここまでくると完全にヤラれるという確信が出てきます。バットマンに注目をするとすでにバットを構えにかかっています。

とにかく頭をヤラれたらまずいな、ボコボコにされたらどこまで持ちこたえることができるんだろう。最後まで頭守れるかなぁ、と考えているうちにあっという間に彼らの目の前まできました。

5)Fire

ヤラれるのは分かっていたのですが、まさか停まって「お手柔らかにボコってください」というわけにもいかないので、どうしようか悩んでいるうちに敵との距離はどんどん詰まっていきます。

最後は妙案も思い浮かばないまま目の前までいってしまい「えーいままよ」と突破を試みました。

すぐにバット マンがバットを構える気配を感じたので車道の方に避けようとしたのですが、バキッ!背後から振り落とされたバットが右側頭部を掠め肩を直撃したのです。



6)そして亀になる

一撃を食らった瞬間、来たな、という感じでした。これは逃げられないということが明確だったので、防御体制に入って被害を最小限にするしかないと思いました。

車道を見るとまだ車はいなかったので、そのまま車道に少しだけ飛び出し地面に頭を抱え込むように腕でかばってうずくまりました。車に引かれたらもちろんシャレになりませんが、物陰に引っ張り込まれてタコ殴りされたら持たないと思ったのと同時に、車は必ず通る時間帯なので、端っこの方でも車道にいれば助けてもらえる可能性もあると思ったのです。ボコボコにされる前に車が通れば助かるかも知れないと判断したのです。

それまではとにかく頭を守って殺されないように頑張るしかないと思っていました。とはいえバットでボコボコに殴られた経験なんてないので、どこまで持ちこたえることができるのかは不安でした。理屈で考えるようには守り切れないんだろうな、とも。

そんなことを考えながら車道の端っこに頭を抱えて亀のような防御態勢に入りました。一発目はたまたま芯を食わなかっただけで、恐らく想像もつかないほど痛いことになるのだろうと思い、理屈では何があっても頭だけは守り続けなければダメだとわかっていても、果たしてそれができるのかどうか心配でした。



ちなみにバットで撲られてからはずっと大きな声で「あわあわ」言っていました。撲られた直後から自分はちゃんと悲鳴をあげることもできず「あわあわ」としか声を出せていないなとわかったのですが、周囲に誰もいなくても声は出した方がいいと思い、できるだけ大きな声で「あわあわ」いい続けるようにしていました。

さて亀態勢に入ってようやく「何か金目のものを渡して解放してもらうことはできないか」と考えることができました。しかし先述の通り、短パン一丁で走っているのでお金は持ってません。どうしよう?と思っているのですが、それにしても次の一撃がまだ来ません。時間にしてわずか数秒のことだと思いますが、覚悟を決めて待ち構えている方からすると却って不気味です。

すると突然腰からスポーツ用のウェストポーチ(下記写真モデル)が剥ぎ取られる感触がありました。そりゃそうだ、それをまず奪うのは正解だ。これで終わってくれ!でも終わるわけないか・・。

・・・・・・・・・
・・??えっ?本当に終わり?

恐る恐る頭を少しだけ上げて様子を見てみると、犯人たちは野球場方面に向かって猛ダッシュしている。

おお、これは助かったかも。危なかった。



7)さてどうしよう?

犯人たちがすでに遠くまで走っていたので、とりあえず起き上がりました。

撲られた右耳のあたりを触ってみると、ベタッと血が付いていたので、持っていたハンドタオルで押さえました。

彼らのダッシュっぷりを見るにまず戻ってくることはないだろうと思われましたが、とりあえず20m程ジョグして、彼らから見えない位置に移動しました。
特に頭痛とか目眩もないし、首も問題がなさそう。とはいえ車が駐車してあるところまでは歩いて15分以上はかかる。さてどうしよう?

とりあえず後で警察に行くときのために犯行時刻はしっかりと記録しておこうとランニング用のGPS時計を止め、時刻を確認しました。21:47。諸々考えると犯行時刻は21:45ということにしておきましょう。

さてここを離れて次のアクションに移らないと。一応ヒッチハイクみたいなことを数台してみました。そう、ここは確実に車通りはあるのです。

でも誰も止まらない。そりゃそうだ。裸の上半身に血が滴り落ちていて、耳を抑えながらヒッチハイクするオッサンを乗せるバカはいない。僕でもスルーだ。

というわけで歩いて車まで戻ることに決めました。撲られた頭部は少しは痛かったですが、あきらかにクリーンヒットしていません。頭痛も目眩もなく、首も大丈夫です。割と元気に歩き出しました。一瞬だけ彼らがまた襲ってくることはないかという考えが頭をかすめましたが、冷静に考えるとそれはないでしょう。

今後の対応もあるので、いっそのこと走って帰ろうかとも一瞬思ったのですが、いくら平気そうに思えても頭を撲られているので無理して何かあったら大変だと思い、かったるかったのですが歩いて帰ることにしました。



8)事後対応

さて歩きながら、色々考えました。
自分がとった行動に間違いはなかったか、もう少し別の行動をとればこの事態は避けられていたか、などです。
結論として、唯一避ける機会があったとしたら30−40m前に彼らを見た瞬間に踵を返すことくらいしか考えられませんでしたが、正直いうとそれはちょっと非現実的ではありません。一生懸命走っている人は簡単には止まれません。襲われるという確信なく逃げることができるのは余程勘のいい人かビクビクしながら走っている人でしょう。

もう一つそもそも論として、あの時間帯にあの場所は走ることが非常識だったのかについても考えました。その後、何人かの警察に話を聞いたのですが、あの場所でこうした強盗犯罪がおきることはほとんどないようです。またローカルの女性ランナーも複数夜に同じコースを走ることがあると言っていたので、それほど非常識なランニングではなかったのではないかと思います。もっとももう夜にあのコースを走ることはできませんが。

さて、反省会とは別に今後の対応としてできればiPhoneを取り戻したいというような色気がありました。

とりあえず車に戻ったら着替えて、店に戻って(私はレストランを経営しているのです)スタッフに状況を伝えつつ、パソコンからFind my iPhoneで犯人を追いかけ、そのデータを持って警察に行こうと決めました。

それにしてもケイタイがないと、誰とも連絡が取れないし道すがら音楽も聴けないし不便だ。

妻への連絡はどうしようかと思ったのですが、店に戻る頃には妻は娘(10ヶ月児)を寝かしつけたのに伴い一旦寝てしまっていると思ったのと、慌てて娘ともども出てきたら、娘の負担になるだろうと思い、Facebookで「ちょっとした事故にあってこれから警察にいかなきゃいけないので少し遅くなります。ケイタイをなくしちゃってつながらないけど、Kくんにも来てもらうので、何かあったら彼にメッセージしてください」という軽めのメッセージを送ることにしました。

Kくんとは母の家にホームステーで来ている大学生で、彼を呼び出して警察に来てもらったのです。しかし僕があわててパソコンを閉じたせいか、このメッセージは妻には届かなかったらしく、後でKくんから連絡が入った妻は相当慌てたようですが。



9)iPhoneを盗まれたら

さて先ほどiPhoneのfind my iPhoneについて書きましたが、結論からいうと店に戻ってトラックしたときにはすでに接続は切られていました。

その後、地元キャリアーの社長に話を聞いたところ、手慣れた犯罪者はすぐにSIMを抜いてしまうのでfind my iPhoneでトラックするのは難しいだろうということでした。

さてこのiPhoneの件に関して僕は大きなミスを犯してしまいました。
僕としては 1)できればfind my iPhone機能で犯人を捕まえたい=犯人にトラックしていることがバレないようにしたい 2) 犯人にケイタイを使われたくない、という気持ちがありました。

そこでキャリアーに電話して相談したところ、紛失モードではなく消去を選んでしまい、さらにサービスを一時停止させてしまったのです。

結論からいうと、素直に紛失モードにしておくべきでした。
襲撃されたことをFacebookに上げたところ、友人からの連絡でiOS7以降はApple ID Activation Lockという新機能があって、端末をいくら初期化してもオリジナルの所有者がactivateしないと新しい所有者はそのiPhoneでApple IDがつかえなくなるということを知りました。そのためには紛失モードにしなくてはいけませんでした。

一番悔しいのは、盗まれたもので犯人たちが利することです。これを使えば確実にそれは阻止できました。

警察は電話を使えるようにしておいて、通話記録から犯人を割り出すことをしたかったようですが、犯人が手馴れていたらキャリアーの社長のいう通りSIMをすぐに抜くでしょうし、間抜けだったら通話記録を見るまでもなくfind my iPhoneを通じて探し出せたでしょう。

というわけで、iPhoneをお使いで紛失した肩はすぐに紛失モードにすることをオススメします。




10) 現場検証

警察に行き応急処置を受け、簡単な事情徴収をされました。病院にいって縫わなければダメだと言われ、救急車でいくか問われましたが、Kくんに送ってもらうことにしました。

病院に向かおうとすると、警察から「現場にちょっとだけ寄って話を聞かせてもらっていいか」と尋ねられたので協力しました。

現場にはすでに4台くらいパトカーが停まっていました。
簡単に状況を説明していると、警察官が「このバットだな」と言っている声が聞こえました。

そこには折れたバットの頭部がありました。最初の一撃の後、バットが折れたようです。だから殴打も一発で済んだようでした。これはラッキーでした。

現場の路上には血痕が残っていました。転がっているバットと血痕を見るとそれなりに生々しく、結構な事件に思えてきたのを覚えています。

その後、不審者を確保したので面通しをしてもらえないかと頼まれたので協力しました。連れて行かれた場所には二人の男が手錠を後ろに立たされており、パトカーの中から彼らに強い光を当て顔を確認します。向こうからはこちらは見えません。

ところが自分でも驚くくらい犯人の顔を覚えていないものでした。すべて一瞬のことだったということもありますが、まったく覚えていません。その二人はバットマンの後ろにいた助さんと格さんに見えなくありませんでしたが、一切の確信は持てませんでした。そこにいたのがバットマンだったら思い出せたかも知れませんが、正直いうと自信はありませんでした。

その後、ゴロツキがたむろしているコンビニの前も通り、犯人はいないか尋ねられましたが、その中には明らかにいませんでした。

自分は終始冷静でいたつもりでしたが、犯人の顔や細かい服装(大まかな色だけは覚えていた)を全然覚えていなかったことにはむしろ意外でした。

その後、駆けつけた妻ともども病院に行き、頭部を縫って家に帰りました。

11) PSTD

襲撃事件のあらましは以上です。
今回の事件については終始冷静でいたつもりでした。だから「怖かったでしょう」とか「精神的ダメージ」とか言われても、平気、平気と思っていました。

でもやはり精神的なダメージは残っているものですね。翌日、日中に知らない人が近づいて声を掛けてきたとき(店でスタッフは募集していないかを聞きにきたのですが)、自分でも想像しない程「怖い」という気持ちになりました。

また運転中信号待ちをしている前の横断歩道を歩いている人が突然襲いかかってきたらどうしようという気持ちになり、ちょっとだけ構えてしまいます。

いずれも深刻という程のことはなく、早晩癒えるとは思いますが、大した怪我をしなかった僕でさえこうなのですから、深刻な事態に陥った人のトラウマはきっと相当なのだろうなと思います。



以上です。
誰かの何かの参考になればと思います。

一応、インタビューを受け地元紙の一面に載ってしまったので、皆さんに多くご心配頂きましたが、元気にやっております。ご心配おかけしました。

そして大変多くの方から、励ましのメッセージを頂きました。それがどれだけ僕を励ましてくれたか知れません。この場を借りて改めてお礼申し上げたいと思います。

本当にありがとうございました。

鶴賀太郎

what's "my wife's camera"?

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