2012-08-25

日本外交理解への補助線



ども。

バーバーがたろうです。

外交・領土問題の知識は床屋の域を出ないので前回の吐き出しで終了にしようと思いましたが、現在の日本の一部報道における"評論家"、"コメンテーター"があまりにもデタラメというか勉強不足なのでまた髪の毛を切りに参りました。

このメールの目的はただ一つです。
尖閣問題に関する外務当局が何を考えているのかを理解することを助けることです。

みんながこの問題に対してどう考え、日本の当局の対応に対してどう思っているか知らないけど、少なくとも外務官僚は日々外交のことを日本の利益を中心に真剣に考えている頭のいい人たちです。また彼らを弱腰とか時によっては売国奴呼ばわりする人もいますが、僕が知る限りではわりと右寄りの愛国精神満ちた人たちが多いです。

もちろん彼らの決定が正しいとは限りませんが、少なくとも彼らの思考回路を知らずギャアギャアいうのはみっもない限りです。

もっとも日本では日々様々な情報が出ているので今更僕がしゃしゃり出るまでもないかも知れませんが、まあ洗髪でもしながら聞き流してください。

では簡単にポイントから。
1)尖閣問題は戦争でも起きない限り解決しない。
2)「領土問題」は存在する ー 周恩来・田中角栄、鄧小平の知恵ー
3)前原誠司問題とアメリカ陰謀説

1)尖閣問題は戦争でも起きない限り解決しない。

ま、これは前回のメールでも書いたとおりです。歴史的正統性なんてどこで線引きするかによって変わってきます。双方が双方に都合のいい主張をする場合、国際世論に訴えかけても「双方で話し合って解決しなさい」と言われるのが関の山。余程の利害関係がない限り誰も人さまの喧嘩に口を首を突っ込みたくはないのだから。

ちなみに「尖閣は明らかに琉球王国の支配下にあったから日本のものだ」という人もいるけれども、明代まで遡って「そもそも琉球は朝貢貿易のもと中国の支配下にあった」とか言われたら水掛け論。つまり本当にどこで線を引くかというだけの問題。

余程のことがない限り解決しません。

2)「領土問題」は存在する ー周恩来・田中角栄、鄧小平の知恵ー

で、領土問題なんて解決しやしないというのは両国の外交当局は百も承知なわけですよ。それでも何故領土問題でガタガタ騒ぐかといえば、それは先のメールでも書いた通り外交とは自国の利益を最大化させる営為だからです。 この場合トリッキーなのは「自国」という言葉の意味が時に「現政権」という言葉にすり替わることがあるということ。

簡単にいえば、領土問題で相手国に揺さぶりをかけて何かを引き出すということはわかりやすい「自国の利益」だけれども、国内の不満分子のガス抜きというのは「自国」というよりも「現政権の利益」。

ただいずれの場合にしても領土問題を解決、すなわち国際社会に明確に主権を認めさせることを可能だなんて考えてなんていないんです。

で、僕が一部報道を見てイライラしたのは「そもそも尖閣に関しては領土問題なんて存在しないんです」と本気で言っているようにしか見えない人がいるからです。

ポジショントークとしてのこの発言はあるかも知れませんが、本気で言っていたらゲンナリです。

簡単に歴史を振り返ると、我らが1972年に日中国交正常化するときに、田中角栄が「ところで尖閣の問題はどうすんべ?」と聞いたときに周恩来は「そのことについては話したくない。っていうか、国交正常化に比べればそんな小さなことどうでもよくね?話すのやめね?」と言ったわけですよ。

そして1978年の鄧小平です。登場副首相であった彼は
「このことは話さない方が双方のためでしょ。だって解決しようがないもの。こういうことに触れないってのが中国人の知恵です。10年くらい棚上げしてもいいんじゃないですか。孫の代には少しはアタマもよくなって解決策も見つかるかも知れないし」というわけです。
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/117.pdf 、p7参照)

この背景には当時経済的にまだ未成熟だった中国が円借款を喉から手が出る程欲しがっていたということがあります。

つまりこういうことです。
「どうせ解決なんて不可能なんだから、ことを荒立てないで仲良くしようよ。流石に釣魚島は日本のものだって認めることはできないけどさ、お金を工面してくれたら実質的には支配していいから」

そうして日本が実効支配したのです。
ここで大切なのは1)日本の実行支配が認められている、2)その実効支配は「領土問題」は存在するけれども棚上げしている、という前提に支えられているということです。

言葉を換えれば、尖閣問題の名実において日本は「名」は棚上げにし、「実」を取ることが許されているという超有利な状況にあるわけです。実質的に解決不可能な領土問題においてこれ以上の外交的勝利はありません。

北方領土を始め領土問題についてきちんと理解していた橋本龍太郎はそのことをわかっていたので、日中漁業協定の新協定においても尖閣は「中間水域」というグレーゾンとして残しておいて中国のメンツを潰さなかったわけですよ。

つまり繰り返しになるけど、「領土問題」は存在する。そしてその存在を認めたことが日本に有利な状況をもたらしていると。

だからアホコメンテーターが本気で「領土問題は存在しない」っていうのを聞くとイラついてくるわけです。

3)前原誠司問題とアメリカ陰謀説

ここまで書いただけで、すでに何故外務省が今回のような対応をとるに至ったかという思考回路はわかるでしょう。

しかし今回の尖閣に至るまで一つ大きな問題がありました。
それが前原誠司問題です。

2010年の中国漁船衝突事件のときです。当時国交相だった前原が公務執行妨害罪で逮捕抑留、起訴しました。

これは明らかにこれまでのコンテクストからは逸脱した行為でした。よく引き合いにだされる2004年の上陸では、小泉純一郎が入管法に基づき強制退去にしているわけですが、これと前原の判断との違いはなんでしょう。

これは国家主権の主張の度合いが全く違うのです。

といいながらも実は僕もよくわかっていないのですが、入管法というのはなかなかトリッキーなもののようです。それはポツダム政令を根拠にしており、形式上は政令で法律ではありません。政令と法律における国家主権の関与の強さの違いについては勉強不足でわからないのですが、根拠がポツダム政令にあることや日中漁業協定に回収させることができることから公務執行妨害とは意味が全然違うでしょう(入管法の扱いについての説明が間違っていたらごめんなさい。教えてください)。

それから前原は起訴までしてしまいました。これはもう完全に日本主権の発動です。これでは「今までと約束が違うじゃないか!」と中国が怒っても当たり前です。

いや、正確にいうと怒るというよりも驚いたのではないでしょうか。

「はぁ?日本にとってあんないい条件なのに、何を考えているご破算にしようとしてるの??」という感じです。

これが前回の尖閣問題の時に起きたことです。

さてここからは余談ですが、一応外交についてもそれなりの見識のある前原がいくらタカ派であるとはいえあんな暴挙にでた裏にはアメリカの存在があるのではないかという陰謀論もあります。

中国の台頭をちょっと牽制したかったアメリカが、タカ派の前原に振り付けをつけたのではないかというシナリオです。在日米軍肯定派の前原は基地問題にとっても都合がいいし。直後の内閣改造で前原が外相になったこともこの陰謀論者を加速させています。

あくまでもそれは陰謀論の域をでない話ですが、少なくとも「アメリカの前原の評価が高い」という話を聞いて「はあ、前原さんはエライ先生なんですねー」とアホみたいに感心してはいけないということです。

アメリカの評価が高いというのは、アメリカが自国の利益を最大化するために都合がいい人物であるということだけはお忘れなく。


++

こんなとこです。

一時、前原が日本外交を混乱させましたが、基本的には上記のラインにしたがって見れば外務省の考えていることは大方わかると思います。

今回、起訴せず小泉純一郎と同じ措置を取ったのは外務省が一生懸命、既定路線に舵を戻したということです。

このまま何とか元サヤに収まってくれと願っている人も多いはずです。

ちなみに第2次小泉内閣の防衛大臣だった石破は「前回と今回は状況が違う」というような勇ましいことを言っていますが、それはポジショントークでしょう。「原発が必要なのは核オプションのためではなく、日本人の生活のためだ」と彼がいうのと同じくらいのポジショントークだと思っています。

もし彼がそう思っておらず、本気で中国とこの問題でやり合うべきだと思っているなら危険すぎます。今すぐ「総理になって欲しい議員」候補からはずすべきです。ってそんなことはありえないと思うけど。

そんなとこです。

以上を踏まえた上で、今回の一連の措置の是非を語るのは自由です。でもこういうややこしい問題で人さまに議論をふっかけようとするなら、少なくともこれくらいのことは知って置いて欲しいものです。


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