2011-02-02

Rhythm Blues



昔、よく人に「どういう誉め言葉を言われると嬉しい?」と聞いていた時期があった。

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私は音楽が好きだ。小学校の時NHKの「みんなのうた」しか流れていなかった給食の時間の音楽を、放送委員の特権を使ってすべてビートルズに変えてしまい、中学では「夕焼けニャンニャン」を見る傍らベストヒットUSAをかならずチェックし、高校の文化祭ではクラブならぬディスコを開き、トレンドセッターとして君臨し続けていた。

音楽的な訓練は受けたことはないものの、大学、社会人と数々のパーティーでのサウンドコーディネートを頼まれ、寝言でよく「No Music No Life」と言っているというのは友人の間ではよく知られた話だった。

そう、私は音楽を愛し、そして音楽は私を愛している。

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妻は音楽が好きだ。ただ私と違って音楽家の血を引き、その薫陶を受けている。「ザ・ベストテン」は観たことがなかったらしいが、モーツァルトは全部聞き比べたことはあるらしい。ユーロビートの洗礼は受けていないもののオーストリア人にしかわからないワルツの微妙なリズムの神秘には迫っていた。

私には私の領域があった、そして彼女には彼女の領域があった。
しかし彼女の領域は私のそれを軽く内包していた。ヒップホップやR&Bはそれほど好きではなくとも私よりもずっと音楽的には高度にそして専門的に理解できたし、テクノやエレクトロニカについては私に負けず劣らず好きでもある。

その彼女は結婚前、踊る私を見て思っていたようだ。
「この人、なんかリズムがずれてて一緒に踊りにくいのよねえ。でも本人が気持ちよさそうだからいいか」と。

しかし結婚するまではそんな様子もおくびにも出さない。男を立て、気持ちよくさせる。大和撫子の超絶テクニックだ。

が、それも結婚まで。結婚後はラジオから流れる音楽を聴きながら「はい、じゃあこれのリズムとってみて」とこちらを試してくる。そしてため息をつく。

いや、そんなはずはない。私にリズム感がないはずはない。たしかに卓越したリズム感はもっていないかも知れない。でも、リズム感がないなんてありえない。なぜなら私は音楽に愛されているのだ。

たしかに高校の音楽の授業のリズムのテストでひどく悪い点数はもらった。しかしそれはきっと私がその先生に目をつけられていたからだろう。CDJが表示するBPMが私の感覚とずれていることもある。しかしそれは私が持っているCDJが安物で、きちんとビートを取れないのだろう。複雑なビート構成の曲もあるし、変調する曲もあるし。

とにかく私にリズム感がないなんてありえない。たとえ縄跳びをしていて途中でタイミングがずれることがあったとしてもだ。何せ私は音楽に愛されているのだから。

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結婚5年目に入ると彼女はもはやため息をつかない。ただただ面白がる。

「はぁい、じゃぁこれリズムとれる?」私はもちろんは非暴力不服従だ。

「どうしたの?」完全にいじめっこの目だ。

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私は今も音楽を愛してる。しかし歳を重ねると時に愛は不平等だということを理解するようにもなる。

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「どういう誉め言葉を言われると嬉しい?」
そう人に尋ねられると、時に同じ質問を返される。

当時なんて答えていたのかは最早覚えていない。しかし今ならこういうだろう。

「日本人離れしたリズム感があるよね」

適わぬ夢と知りながら。



what's "my wife's camera"?

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