2010-12-03

2000-2010 ヒット商品ランキングとiPhone。



日経トレンディーネットのPodcastで「ゼロ年代ヒット商品ベスト10」という企画がありました。2000年から2010年までのヒット商品ベスト30をさらにランク付けていこうというものなので、正確にはゼロ年代プラス2010年なのですが。

2000年といえば「2000年問題」が話題になった年ですし、翌2001年は9.11テロの年。その辺りのものから今年のヒットの中から選りすぐってランキングをつけるのですから、これはなかなか面白いです。
ランキングについては実際Podcastを聴いて頂いたり、日経トレンディーのWebで見て頂いた方が楽しめるでしょうから詳細はここでは記しませんが、ひとつだけ。

実は10位以内にiPhoneが入っていなかったんです。個人的にはこの10年間で一番私の生活を変えた商品はiPhoneでしたし、世の中iPhoneだらけというイメージがあったのでちょっと驚きました。(ちなみに本誌ではベスト30まで、無料で会員登録してみられるWebでは100位まで掲載されているようなので、さすがにそのどこかにはランキングされているとは思いますが)

「なんで入っていないんだろう」当然そう考えました。そして出した結論というのは「iPhoneの普及は日本ではアメリカより2年以上遅れたし、2010年になってようやく『スマートフォン元年』と言われるようになったくらいだから、iPhoneはまだ一般にはオシャレイメージが先行していてその革新性というのは理解されていないのかなあ」というものでした。

それでは私が考えるこの10年間のベスト商品はなんだろうと考えてみました。当然iPhoneに決定すると思いきやこれが違ったのです。

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私は昔からPDAなどのガジェットが好きで、10年以上前からシャープのZAURUSソニーのCLIEなどを使ってきたので2007年ににSteve JobsがApple WorldでiPhoneを発表したときは「これこそが究極のガジェットだ」と感動したものでした。

しかしそれから一年経って、iPhone3Gの発表をPodcastで見たときは私は思わず膝を打ってしまい、仲のいい友だちにメールしてしまいました。

それはこういう内容でした。

「iPhoneは私が待ちわびていた理想のガジェットだけれども、Appleの最終兵器はiPhoneではない。Appleが他のエレクトロニクスメーカーの追随を許さない最大の武器は"iTunes"だ」と。

たしかにこのときすでにiPhoneはスーパーヒット商品でした。しかしそれだけですとただのヒット商品を出したメーカーにすぎません。でもiPhoneがスゴイのは自由に進化し続けることができるからです。つまりはアプリをどんどん好きなように入れることができるということです。

今でこそどのスマートフォンもアプリの充実度が大事とされていますが、iPhoneがでるまではそういう発想はありせんでした。ある程度の機能がプリインストールされているか、必要に応じてWeb上のアプリを使う程度でした。

しかしiPhone以降は携帯電話は自分が使いたい機能をすべて詰め込み持ち運べる端末になったのです。電話、アドレス帳、スケジュール帳、計算機、カメラ、ネットアクセスはもちろん地図、時刻表、辞書、ゲーム、動画編集、表計算、プレゼン、とにかくPCでできることはすべてiPhoneでできてしまいます。
そしてそれを可能たらしめるのがiTunesからつながるAppストアなんです。

この流れでもうおわかりでしょうが、私がこの10年間で一番すごいと思っている商品はiTunesなのです。

でもこれはiTunes storeが人々の生活を便利にしてくれるからということだけが理由ではありません。
そこにはAppleの恐ろしい戦略が見えるからです。

iTunes storeでは色々なものを買うことができます。TV番組や映画、アプリやゲーム、電子書籍もそうです。こういう事業を始めること自体はひょっとしたら誰にでもできるかも知れません。しかし何といってもiTunesは世界最大の音楽ソフト販売チャネルなのです。世界中のどのCDショップチェーンよりも音楽を売っています。

iTunesはすでにお客さんをたくさん持った店舗ということですよね。しかもそのお客さんたちはiTunesを通じてショッピングすることに馴れています。つまり買い物の仕方を知っているお客さんがうじょうじょしているいるところで別の商品を本格的に売ろうとしているのです。

そういう意味ではAppleはエレクトロニクスの会社にとどまらず小売にも本格的に手を広げたということになります。

そう考えるとiPhoneというのはひとつのとても便利なガジェットであると同時に、iTunes storeで売られている商品をより魅力的にさせるためのツールでもあるともいえるのです。

だから別にAppleはiPhoneにこだわる必要はありません。iPadでもなんでもいいのです。iTunesを通じてコンテンツが熟れ続ければそれでいいのです。その証拠に最近になってMacでもApp Storeをオープンさせました。

これコンテンツプロバイダーにとっても魅力的です。個人でアプリを制作して販売し大儲けしたという話を聞いたことはありませんか。iTunesならそれも可能です。

たとえばある個人が単純だけれどもとても面白いゲームを開発したとしましょう。それをソフトウェアメーカーに買い取ってもらおうとしたら大変な手間隙になります。買取なのかコミッションなのかから始まって面倒くさい契約手続きがあります。個人だったら足元もみられるでしょうし、そもそもどんなに面白いものができても先方の窓口となる担当者にセンスがなく門前払いされることもありえます。

そういう手間隙がいやだから自分でホームページを立ち上げてもアクセスはそれほど期待できませんし、決済とかセキュリティーの問題も厄介です。それがiTunes storeの簡単な審査さえ通れば30%の販売手数料を取られるだけですべて解決します。

簡単に試算してみましょうか。たとえば大ヒットアプリを開発して、100円のアプリが全世界でiPhoneとiPadを持っている人の100人に1人、1%が買ったとしましょう。すると3000万円以上の収入になります。

そして事実そういう人はいるのです、わずか2ヶ月で25万ドル儲けた人もいるわけです。

となると自然と我こそはという人がiTunesでソフトを売ろうとする。もちろんアプリだけでなく、音楽でもそうですね。その結果玉石混交になるかも知れませんが、iTunesにはソフトがどんどん集まってくる。

利用者は検索をしてレイティングなどを見てから買えばいいわけですから、下手をすれば店舗で買うよりも堅実に買い物ができる。

さらに利用者にとって「音楽はMora、本はAmazonかeBookJapan、ゲームは・・」と考えるよりもすべてiTunesで管理できた方が楽なので過度な値引き競争に参加する必要もない。

これがiTunesなわけですよ。そして間違いなくAppleの経営陣はそこまで考えて戦略を練っているはずです。

世界でもっともクールなエレクトロニクス&コンテンツデストリビューティング(配信)カンパニーの標榜です。

「コンテンツの時代」と言われるようになって久しいですが、まさに世界最大のコンテンツの送り手にほとんどなりかけているのです。自分たちはiTunesという維持コストが限りなくゼロに近い店舗を用意し、そして世界中のトップクリエイターにコンテンツを供給してもらう。

コンテンツプロバイダーにとってiTunesがより魅力的になるように、常に尖端の機器を供給するように頑張る。つまりiTunesを中心に世界のコンテンツビジネスを支配するのです。

そう考えるととても腹落ちしますし、少なくとも私はそういう風に思えてなりません。
だから私はiTunesがこの10年間で最強の商品だと思うわけです。

そう考えると他の会社は大変です。エレクトロニクスの会社であれ、コンテンツの供給であれ敵は強力です。
では日本の会社でAppleに対抗できるところはあるのでしょうか。

実はその件に関して昨日ちょっと絶望的な気持ちになる体験をしてしまいました。
そのことについてはまた明日のBlogで書きましょう。


what's "my wife's camera"?

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