2010-11-09

【書評】「Born to Run」(Christopher McDougall)




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Born to Run: A Hidden Tribe, Superathletes, and the Greatest Race the World Has Never Seen」(Christopher McDougall/Knopf)
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いつものフォーマットで偉そうに「書評」と銘打っていますが困りました。
この本は私にとても大きな影響を与えたので、どこまでどういう形でこの本を読んだ(実際はほとんどAudiobookで聴いたのですが)感想というかインパクトが伝わるか自信がありません。

でもとりあえずは出会いから。

まず本書を知ったのはラジオ番組「小島慶子キラ☆キラ」で水道橋博士が激プッシュしていたから。

聴いていただければわかるのですが、博士が生涯のベスト10に入るという本なれば少しでも走ることに興味のある人なら読んでみようかなというのはむしろ自然な流れなわけで、私はすぐにKindle for iPhoneとAudiobookでダウンロードしました。

ただ博士がプッシュするくらいですから、もちろん日本語でもNHK出版から出版されてます
さっと内容から説明しますと、足を痛めて走ることができなくなった著者のChristopher McDugallが超長距離を走ることができるメキシコのTarahumara族の存在を知るところから始まります。

彼らは日常的に100km以上走ることのできるメキシコの山岳部に住む民族で、過去に100km超のウルトラマラソンに二回参加し、全米のトップランナーを押しのけ優勝している民族なのです。

本書はCaballo Blanco(白い馬)というなぞのランナーを通じてTarahumara族に出会い、人間が延々と獲物を追って走り続けることによって仕留めるという学説を通じ人間は走るために生まれてきたと確信し、そしてCaballo Blancoを通じてTarahumara族のランナーと全米のウルトラマラソンのトップランナーが一緒にレースする機会をルポする小説仕立ての物語です。

書評めいたことを書くのなら、導入の掴みの部分も十分に強いし、それぞれのランナーのキャラクターも十二分に立っている。人間は走るために生まれてきたとする学説の解説と説得力も興味深く、そして物語の推進力になっている。さらにはラストに向かうレースの記述はクライマックス的な興奮を十分に高めてくれる。つまり、ルポとも小説ともつかない本書は十二分に面白い。

と、にべもなく総括してしまいましたが、それは本書がとても個人的に私に刺さって通常の書評が無意味になってしまったからなんです。

具体的にいうと本書を通じてベアフットランニングに出会いました。最近ブログこのブログでも書いてきたVibram Fivefingersと運命的な出会いを果たしたのも本書を読んでいる最中でした。その上、先日マクロビオティックの勉強をしている妻からいきなり「あなたのランニングの『師匠さん』ってTarahumara族だっけ?」と聞かれました。そう、マクロビ的にみてもTarahumara族は極端に心臓病の少ない彼らは興味深い研究対象らしく、その食生活は本書でも少し触れられています。以前も書いたように私も妻の影響で大分マクロビ寄りの食生活になっており、それを是としているのでここでも「つながっている」感があります。

ここであらためてなぜ本書がそこまで私に響いたのかを考えてみたいと思います。

まずタイトルの「Born to Run」は人間はそもそも走るために生まれてきたという意味ですが、若干のネタバレ覚悟でいうとそれは「人間は短距離走は遅いけれども持久走は他の動物と比しても優れており、人間は動物を延々と走って追い込んで猟をしていた」という学説に乗っかっているのです。

ここで私が今年の春に鳩カフェに参加したときに知り合った北海道の農家の方が「鹿を1,2頭仕留めると四人家族が一年間食べていくのに十分」ということを仰ってのが思い出されました。

ということは100人の集落で移動していたとしても週一頭の鹿を仕留めることができれば十分皆を食べさせることができるということです。つまり100人の集落の選りすぐりのハンター4,5人で週に一回数十キロ走る猟にでかければ他の集落のメンバーを食べさせることができるのです。このペースというのはとても自然なもののように感じられました。なんていうのでしょう、無理がないというか自然の生態系を壊さないというか。

私は2004年の4月に田舎時間という農業体験プログラムに参加して以来、農業ということをひとつの行動規範として考えるようになりました。

それは苗植えや収穫の忙しい時期は週休二日などと呑気なことなどいっていられず、家族総出で助け合って生きていかなければならないとか、晴耕雨読とかそういうことなのです。

なんていうんでしょう、どんなに人間社会が複雑になっても人間も動物であることを忘れてはいけないというか。

この本を読んでふたたびそのことを強く感じさせられたのですよね。ハイテクな靴に頼らなくても走れるようにするとか、不必要に他の動物を殺めなくても穀物を中心に十分に生きていけるとか。

本書は人間は走るために生まれた、ということをひとつの大きなテーマとしていますが、同時に注意深く読めば人間はなんのために生まれ、どのように生きるべきなのかということに関しても非常に興味深い示唆を与えてくれています。

自然界の一員として我々人間はどのように生きるべきなのかを、ひとっ走りしながらあらためて考えたい気持ちにしてくれた一冊です。


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