2010-10-02

尖閣諸島。




添谷先生

ご無沙汰しております。

時事通信「週刊e-world」への寄稿拝読いたしました。
「忌憚のない意見を」という言葉を真に受けメールいたします。

まず拙いなりに先生の論旨を要約させていただくと

「尖閣諸島の一件に対し、日本は中国の『時代錯誤的』な『権力政治ゲーム』に
 過剰反応することなく、『自由で開かれた国際秩序』を守る(もしくは再構築す)
 べく、日米同盟を基軸に多国間で協調しながら安全保障体制を確立しなくては
 ならない」

ということになるのではないかと思います。この趣旨については基本的には全面的に
賛同するのですが同時に気になるところもありました。

具体的にいうと「『自由で開かれた国際秩序』と中国」と小見出しがつけられたパラ
グラフでした。

現在の中国は「自由で開かれた国際秩序」を最大限に利用し、破竹にも近い
勢いで成長を続けています。ですから彼らが現在の秩序(すなわち「ルール」)を
大幅に組み替えようと考えているとは思いません。

しかし同時に中国もさまざまな問題を抱えており必ずしも満帆ともいえません。
内には沿岸部と内陸部の経済格差、賃金上昇、そして潜在的には高齢化問題が
あります。
外には経済面だけとってもインドの台頭、ベトナムの低賃金による攻勢、さらには
国際的な元の切り上げ圧力があり課題は山積みです。

その中、中国が国際秩序の中において少しでもいいポジション取りをしようと考える
のはむしろ当然のように思えます。

折りしも先生のご指摘のとおり「パックス・アメリカーナ」は色々な意味で陰りを
見せており、少しくらいの無茶はまかり通りそうな状況とあらば、どこまで許されるかを
試してみようかと思うのも善悪の価値判断さえ停止させてしまえば必ずしも不合理とは
思えません。

そのような状況の中近くに、内ゲバに興じ無防備にアホ面を曝け出している国があった
ので、とりあえず横っ面を引っぱたいて様子をみてみようか、と中国が思ったのではないか
という気がしています。

もし日本がそこで猛烈に歯向かい、国際社会がそれに同調したのなら「こっちが手を振り
回してたところにお前の頬があったから当たってしまったじゃねえか、これからは気をつけろ」
くらいに嘯いてなし崩し的に事態を収束させていたかもしれません。

しかし日本が想像以上に愚鈍な対応しかできなかったため「もう少しやったらどう反応する
だろう?」と考えたような気がします。具体的にいうとそれがフジタの社員の拘束の件だったり
レアアースの件です。

ここで「どう反応するだろう?」の主語はもちろん「日本」ではなく、アメリカを中心とした
「国際社会」です。国際社会の秩序におけるより優位なポジショニングを確保するために、
じりじりゴリゴリやってどこまでいけるのかという様子見をしているように思えて仕方がありません。

この手口がオールドファッションであるということはもちろん認めます。こういう手法に安易に
乗っかってはいけないというのも、まさにその通りだと思います。

しかし同時に「パックス・アメリカーナ」が機能しなくなった現在、それらはそれなりに有効な
手段とも思え、また中国の手際が極めていいとも思ってしまうわけです。

つまり中国はかなり現実的に世界情勢を見極め、少しでも自分に有利なポジショニングをとれる
よう戦略的に行動しており、あわよくばルールを自分に都合のいいように少し変えてしまおうとさえ
思っているように感じられます。

このような状況の下、日本はどのような対応をすればいいのか、先生にお話を伺いできればと
思います。

彼らの手口は見事です。事件のタイミングもいやらしいですし、NYタイムズなどにレアアースの
ことをリークして世論の反応をみながら商務省では否認して逃げ道を確保しておくところも、日本が
船長を解放したことを受けてプロトコル上フジタの社員を開放し、小沢支持をした細野密使に土産を
持たせながらも一人は残してカードは確保しておきつつ、五中全会の前には一応の決着をつける。
ある程度は後講釈かもしれませんが、とにかく何もかも手際が見事です。

中国は国際世論の反応をみながらじりじりゴリゴリポジション取りをする努力を巧みにしています。
しかもアメリカを始めとする世界はそれに抗する元気がありません。

このことを看過できないのは、中国が単なるポジション取りにとどまらず、微妙にルールも都合の
いいように変更しようと思えるところです。

少なくともロシアは千島列島に大統領を訪問させるという形で、とりあえずはそれに乗っかってきた
ように思えます(このタイミングが鈴木宗男氏の収監確定と因果関係があるのかも気にはなります)。

先生がおっしゃるとおり、中国が「自由で開かれた世界秩序」の不安定要因になるとは思います。
しかしあえて先生がおっしゃっていないことで私見を申し上げると、私には中国の様々な行動が
単なる時代錯誤的な権力ゲームの結果ではなく、冷静に国際社会における自らのポジショニングや
ストレングスを熟知した上でのそろばんずくの行動に思えるのです。

もし隣の大国が戦略的意図を持ってちょっかいを出してくるのなら、日本は国家としてどのような
アクションをとればいいのでしょうか。

それは「自由で開かれた国際秩序」を「多国間」で守り抜こう、というハイレベルの概念の話では
なく、もっと具体的なアクションプランの話です。日本固有の領土とされるところにちょっかいを出され
たときにどういう措置をとればいいのかとかという具体的な話です。

拘束すべきは船長だけなのか、それとも船員全員なのか、どのタイミングでどうぢう処遇を出すのが
正しかったのか。記録映像のリークを国際メディアにすべきだったか否か、政権はどの程度コミット
すべきだったか否か。

あまりにも難しく、私の中で結論はでません。そのあたり先生はどのようにお考えかご意見をお聞かせ
頂ければ幸甚です。

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