2010-09-05

祝、開幕戦勝利。



「誰も知らない」などですっかり有名になった是枝裕和監督の初期の作品に「ワンダフルライフ」というものがある。
人は死後、「あの世」に行くまで7日間の猶予を与えられ、その間に生前の一番大切な思い出を選んでそれだけを抱いて死後の世界へと旅立てるとい設定の映画だ。

映画はフィクションとドキュメンタリーが入り混じったような是枝監督独特の手法で素晴らしいものなので是非みてもらいたいのだが、この映画をみると当然誰しも「私ならどの思い出を選んで死後の世界に持っていくだろう」と考えさせられる。

1999年渋谷のスペイン坂にある小さな映画館でみた帰り、私は考えてみた。そしてあまり迷うことなく一つの思い出が脳裏に浮かんだ。

それは大学の部活の最終戦の思い出だった。

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私は大学に入ると未経験だったにも関わらず体育会アメリカンフットボール部の門を叩いた。チーム自体は優勝こそなかなかできないものの関東のトップクラスのひとつだった。しかし私自身は選手としては二流以下だったので二年生になると裏方にまわった。それでも四年間の大学生活は部活を中心にまわった。

その部活の総決算ともいえる四年生のリーグ戦の最終戦。勝てばプレーオフに進み日本一を目指し続けることができる。負ければもちろんその場で引退だが、誰ひとり負けることなど考えていない。

試合が始まった。相手は強豪だとはわかっていたが想像以上に強敵だった。フットボールの生命線ともいえるライン戦で完全に力負けしていた。少しずつ点差が開いていく。突如負けたらすべてが終わってしまうということに気づかされる。そして冷静な自分は勝ち目はほとんどないと告げている。戦術的なアジャストでどうにかなりそうな状況ではなかった。

前半戦が終わる頃、涙が溢れそうになってきた。勝てない。終わってしまう。
でも必死で闘っている仲間の選手たちはサイドラインに帰ってくると「いくぞ。全然いけるよ。絶対に逆転するぞ」と声を上げている。
選手がこんなに頑張っているのにベンチで何もしていない自分が泣きそうになっているのが情けなくて、仲間たちに申し訳なくて、後半戦はただただ涙をこらえながら声を張り上げ応援していた。

時間は残酷に流れ去り、点差は開き、そして私たちの四年間に及んだシーズンが終わった。

試合が終わると泣き崩れるものもいた。試合に負けたのが悔しかったのか、不甲斐なかったのか、ただただ四年間の部活が目標を達成できないまま終わってしまったことへの寂寥感なのか。いまだに説明のつかない感情。

私たちの四年間が終わっても、次に試合をするチームが待っているのでさっさと撤収作業をする。黙々と道具を片付け、引き上げていく。
最後整列してスタンドに向かって一礼する。涙をこらえながらも、すすりあげる嗚咽を隠すことができなかった。そしてそのことを恥ずかしいと思う余力さえなかった。

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それが私が「ワンダフルライフ」を観たときに思った一番の思い出だった。

不思議なことに、大学一年生のときにリーグ戦で逆転優勝を果たしたときのことでもなければ、受験で合格したときのことでもなければ、恋が成就したときのことでもなかった。

無残に試合に負け、無様に泣き面を衆目に晒したその試合を一番の思い出に選んでいた。

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27歳の当時の私はそれを一番の思い出に選んだ。
それが25歳や30歳だったらあるいは違う思い出を選んでいたかも知れない。
それでも27歳のときにその思い出を選ぼうと思わせてくれた、大学の部活動とその仲間には感謝している。

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昨日、関東学生アメリカンフットボールのリーグ戦が開幕した。
私の年の半分くらいの後輩たちやそのライバルたちがそれぞれの青春を全力でぶつけている。いつかかけがえのないものになる闘いに身を投じている。

勝敗だけがすべてではない。
しかしチームワークの結晶としての勝利はなにものにも変えがたい。

ユニコーンズ、開幕戦勝利 本当におめでとう。

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