2010-09-30

ミリタリーファッション。



今年はミリタリールックがトレンドだという。といっても私はファッションについては門外漢で今年のトレンドについて語ろうという気はまったくない。それでもモードの考え方については少しわかる。

モードというのは多くの場合既存の価値観に対するカウンターだ。つまりある分野の先端をいく人々から現状(status quo)に対する提案である。

それを踏まえた上でミリタリーファッションがトレンドだということを考えるとどういうことになるだろう。ミリタリーファッションというのは強烈な記号性を持つからそこに何の意味もないと考えることはむしろ不自然だ。かといってデザイナーがこぞって戦争礼賛に走っているとも到底思えない。

そこで想像力を働かせてみる。昨今のミリタリーファッションは19世紀の軍服をソフトに進化させたものだという。ならばそれは20世紀、つまり資本主義の時代の全否定だと考えることもできる。19世紀にはすでに市民革命を通過しており、社会主義の幻想はまだついえていなかった。つまり民主主義の未来がまだ明るかった時代だった。

次に軍服というものについて考えてみる。もちろんそれは軍隊の征服である。軍隊が象徴するものは色々あるけれども、それは規律だとか秩序の象徴でもある。

そこから考えると、今のミリタリーファッションのブームはモード界から「もう一度、規律をもって新しい民主主義を築き直すべき時代が来ている」というメッセージだと読み解くこともできる。

モードというのは時代へのメッセージであると同時に消費されるものでもある。
だからおしゃれをしたい時にいちいち「このファッションの意味するところは」などとしち面倒くさいことを考える必要はない。
いいな、と思ったら素直に楽しめばいいとおもう。

でも現在も世界中のさまざまなところで戦争はリアルに起きている。その中で「今年はミリタリーがトレンドなんだってぇ」と無自覚、無批判にミリタリーファッションに興じる人には危うさを感じる。世界の人々にとって軍隊は日本人が考えるよりも遥かに身近な存在だ。

身近ということは色々な感情の対象となる。国のために戦う若者として敬意を示すこともあるかも知れない。近しい人を戦争や紛争で亡くしていれば憎悪の対象となることもある。いずれにせよ軍隊とか戦争ということは世界の人々にとって日本人が考えるよりも強烈なメッセージ性をはらんでいるのだ。

日本が長年平和を享受できたことは誇るべきことだ。でも同時に平和ボケしているという事実も否めない。

基本的にはファッションなんて好きなように楽しめばいいと思っている。
でもミリタリーファッションをまとうということは、「正社員はみんな火炙りの刑!!」とか「外国人はいますぐ日本から出て行け!!」とか書いてあるTシャツをまとうのと同じくらい強烈なメッセージを放ちうるということに対しては自覚的であるべきだとは思う。

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