2010-09-17

町山智浩と一芸力。



videonews.comを見ていた。
といっても今日は神保さんの話でも宮台さんの話でもない。
表題のとおりゲストとしてきていた町山さんの話だ。

町山智浩
一部の人にとっては説明不要のビッグネームだろうが一応説明すると、当代を切っての映画評論家であり、コラムニストである。マニアックな映画ファンに人気を誇る「映画秘宝」の創刊者としても知られている。

その町山さんがvideonews.comに出演し、「Inception」と「Casino Jack」について語るのだが、その中でオバマ大統領について語るくだりがあった。

それは次のような内容だった。

「アメリカではオバマ政権が簡単に崩壊することがないと考えられている。オバマ大統領の誕生はオバマの存在の大きさ自体に起因するものではなく、アメリカの大きなイデオロギーの転換によるものだから。アメリカは1930年代から始まるニューディールの時代が72年ごろまで続き、そのあとしばらく空白があって1981年に就任したレーガンがレーガン革命を起こし四半世紀以上も支配してきた。しかし2006年の中間選挙でそれが決定的に崩壊したことが明らかになった。つまりアメリカでは歴史的なパラダイムシフトがおき、イデオロギーの変換が生じ、その上にオバマ政権が誕生したのだから、オバマ自身が少しくらい失敗したくらいでは保守へは回帰しない」

ということだった。
この視座は私には完全に欠落していた。そして素直に感心した。

こういうと町山智浩を知らない人物は彼のことをインテリ映画評論家のように思うかもしれない。蓮實重彦のように。しかし実際のイメージは大分違う。たしかに彼は相当広範で深い教養を持っている。ただそれはインテリゲンチャのそれというよりもオタクのそれ、というイメージなのだ。

町山さんは恐らく小さい頃から映画オタクのような少年だったのだろう。彼は自身のPodcastで時折昔の映画の話をするが、それはDVDで見返したものではなく、彼の少年時代、まだビデオも普及していない時代のテレビ東京の昼間に放映されていたものだったりする。その放映されたテレビ局や年代をびっくりするくらい記憶している。

しかし映画オタクがそのまま大人になったような町山さんの映画評は凡百のインテリ映画評論家大先生たちのそれを遥かに凌駕する。少なくとも私は町山さんの評論を聞いて始めて映画評論という芸の深さを知った。

というのも映画好きが昂じてか、彼の知識教養は映画に必要な分野すべてに及んでいる。ギリシャ神話、ユダヤ教、キリスト教、近現代思想哲学史、文学、サブカルチャー、ロックなどの音楽全般、アメリカを中心とした現代政治。そう、結局は超インテリなのだ。

でも彼の知識はすべて映画を語るためにある。それらは彼の膨大なデータベースと融合してひとつの美しい映画評論となるのだ。町山さんは時にはとんでもない暴論を平然と言ったりするのだが、それでもこちら側にそれなりのリテラシーがあればそれもむしろ楽しい。

私が大学に入る頃くらいからか、AOと呼ばれる「一芸入試」(妻は一発芸入試と最近まで思っていました)が話題になっていた。当時はスポーツ推薦の補助的に使われたり芸能人を大学に入れて話題づくりをするために使われていた印象が強く、私は一芸入試というコンセプト自身を冷ややかな思いでみていた。

しかし町山智浩さんの映画によって培われた力をみると「一芸力」というものはやはりあるのではないかと改めて考えさえられる。

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