2010-08-25

梨元勝氏を偲ぶ。



職業に貴賎はない。私はそう思っている。少なくともそう思おうとしている。
しかしどうしても偏見をもって見てしまう職業があった。それが芸能リポーターだった。

若い頃ワイドショーを見て、芸能人のどうでもいいスキャンダルを追いかけてしたり顔で解説している芸能リポーターをみて嫌悪感を覚えた。もちろん梨元氏もその嫌悪の対象だった。二十歳そこそこの少年少女の惚れた腫れたや人様の浮気を必死になって追いかけることを一生の職業とすることを恥ずかしくないのかと、ろくに働くことの意味もわかっていないくせに生意気にも思っていた。

その後テレビを持たない生活がしばらく続き、芸能レポーターという存在自体を忘れていた。グアムに移ってからはなお遠い存在となった。

しかし先日TBSラジオの「Dig」のPodcastで梨元氏がガンを患っていることを知った。そしてそのときの氏のインタビューを聞いて私は彼に対する印象が少し変わった。

梨本氏はインタビューに答えていた。

「ボクはね取材する立場ですから、これまでも著名人のガンの話を伝えてきたんですよ。その時その方の生き様がね、同じような病気の人の励みになり、あるときは家族の応援になるという形で伝えてきたんですね。だからボクは自分がこういう状況になったときに細かく伝えていこうと思っているんです」
そういいTwitterなどでも自分の様子をできるだけ克明に伝えているといった。

私は感動を覚えた。世の中には口では格好のいい大義名分をいう人は多いが、実際に自分がギリギリの立場に追い込まれたら大抵の場合はキレイごとはぶっ飛び、無様に取り乱すものだ。私はそういう人を軽蔑しない。むしろ人間ならば当然の反応だとも思う。

だからこそ死と向き合いながら闘病している梨元氏が取り乱すことなく、冷静に自分の病状を包み隠さず話す様子に感銘を受けたのだ。と同時にそこに彼がこれまでしてきた仕事に対して通り一遍でないプロ意識の高さを持っていることを感じたのだ。

私の梨元氏に対する印象の変化は、先日送られてきた上杉隆氏のメールマガジンの記述で決定的になった。
メールマガジンは有料のものなので、ここでの無断引用・転載は避けるが要は梨元氏は自らがテレビ界から追放されてしまうということを知りつつもテレビ局という権力におもねず、そして事実テレビから消えてしまったということが記されていた。

いつもハイテンションでまくしたてる梨元氏にそんな側面があるとは思いもしなかった。大義を通すため、権力に立ち向かう人だったなんて考えてみたこともなかった。でも先述のラジオ番組でのインタビューから受けた印象はまさにそういう気骨の人だった。

考えてみればどんな世界であっても第一人者として成功を収める人がひとかどの人物でないはずはない。ひょっとしたら梨元氏もスキャンダルを追いかけることに疑問を虚しささえ感じたこともあるかも知れない。しかし様々な葛藤を経て彼の提供する情報を求める人のために仕事を続けたのだろう。仕事で取り扱わなければいけない内容は時には不本意なものもあったかも知れない。しかし少なくとも仕事の仕方は誇りをもてるやり方を貫こうと決めたのではないだろうか。

++++++++

Podcastでは彼は二回目の抗癌剤治療中だと言っていた。抗癌剤の効きがよくレントゲンに映る曇りが薄くなってきたと言っていた。それが8月4日のことだった。

***

梨本氏は死の数日前までTweetしていた。最後の方のTweetは「頑張ります」と「本当にありがとう」ばかりが目立っていた。

享年65歳。
とてもとても残念だ。心から冥福を祈りたい。

No comments:

Post a Comment