2010-08-13

シャッターチャンス



妻は米が好きだ。そうご飯が好き。米が巧く炊けた日の食卓はそれだけで幸せそうだ。
そして食後、土鍋で炊いた米をタッパーに移す。その時杓文字についた米を最後にパクッと頬ばり、二度幸せそうな顔になる。

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妻に写真を撮ることを勧めたのは私だった。
もちろんスナップで撮る彼女の写真のセンスがよかったということもあるが、グアムにきて熱中できることがないのもよくないと思い勧めた。

彼女はコンパクトのデジカメで写真を撮り始めた。私自身好きでスナップ写真を撮り続けており、また以前に広告の仕事についていたこともあり、偉そうに彼女にアドバイスめいた発言をしていた。「とにかく最初のうちは数を撮れ」やら「シャッターを切るスピードが遅すぎる。そんなんじゃシャッターチャンスを逃す」とか。

しかし生来のセンスに加え、のめり込み易い生活のせいかあっという間に彼女は写真が巧くなった。
デジタル一眼レフを買い、専門書を貪り読む彼女に最早私がいうことはなかった。

そして気づけば写真なら妻、という不文律になった。

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夕食後、妻はいつものように土鍋から米をタッパーに移していた。そしてちょいと杓文字についた米をつまみ食い。幸せそうだ。

「撮りたい」

私は慌ててカメラを撮りに隣の部屋に走って構えた。妻が再度杓文字を口にやる。
ピントなどの設定に手こずる。そうこうしているうちに杓文字が口から離れる。
再度妻が杓文字に口をやるのを待ちながらカメラを構える。
すると「ん、どうしたの?」という様相で妻がこちらを振り返った。

とりあえずパチリ。
それと同時に妻もタッパーの蓋をパチリと閉めた。
完全にシャッターチャンスを逃した。

上の写真はその時の一枚。

愚鈍な私が妻の写真にかけるアドバイス最早はない。

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